研究概要 |
花粉管の反応性獲得機構の解析 成熟した胚珠から分泌される、花粉管の反応性獲得促進物質であるPRIM(Pollen-tube Reactivity Induction Molecule)の解析を進めた。RIMが糖タンパク質である可能性が示唆されたことからヤリブ試薬を用いて結合性を調べたところ、PRIMはヤリブ試薬と特異的な結合性を示し、アラビノガラクタンプロテイン(AGP)であることがわかった。各種レクチンカラムにも反応性を示したので、ヤリブ試薬とレクチンカラム(ConA)を用いて、精製を試みた。その結果、80kDaのAGPがほぼシングルバンドとして同定され、さらにそのバンドを切り出して活性を確認した。アミノ酸シーケンシングのために、当初は花3,000個を使用した培養液からPRIMの精製を試みたが量が十分ではなかったため、現在花13,000個からの精製を目指して準備中である。 花粉管誘引物質の解析 誘引活性が残っていると推察された助細胞からcDNAライブラリーを作製するために、マイクロマニピュレーションにより助細胞だけを回収した(最大で1回の実験で2つの花から65個の助細胞を回収、所要時間は酵素処理開始から2時間以内)。現在ドイツのグループと共同でcDNAライブラリーを作製中である。 雌性配偶体への遺伝子導入技術の開発 シロイヌナズナの配偶体特異的チューブリン遺伝子TUB9のプロモーターがトレニアの配偶体で良好にはたらくことが明らかとなった。さらに、狙った細胞や核、オルガネラだけに遺伝子導入するために、効率良くかつ簡便にマイクロインジェクションを行う方法の開発を進めた。レーザー吸収剤を含むオイルに近赤外レーザーを照射し、オイルの高い膨張圧でインジェクションする新しいシステムを開発した。従来法では不可能な針先0.1μm程度の針で細胞へのダメージなく精密なインジェクションができた。
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