研究概要 |
本研究は,モデル単子葉植物のイネを研究材料とし,花器官のアイデンティティー,器官数および葉の中肋形成を制御する分子機構を解明することを目的としている. まず,イネのクラスC遺伝子の機能を解明するために,この疑問に答えるために,イネの2つのCクラス遺伝子,OsMADS3とOM55(仮称),の変異系統(TOS17,T-DNAタグライン)のスクリーニングとRNAiによる内在遺伝子の抑制を行った.これらの変異系統を用いて解析した結果,両遺伝子とも,第2whorlではリンピの数の制御,第3whorlでは雄ずいアイデンティティーの決定,第4whorlでは花分裂組織の有限性の制御に関与していることが示された.しかし,雄ずいアイデンティティーの決定にはOsMADS3が,分裂組織の有限性に関してはOM55がより重要な機能を果たしていることが示され,これらの2つ遺伝子がwhorl依存的な機能分化していることが明らかになった.一方,心皮アイデンティティーは両遺伝子の強い変異体でも残っており,シロイヌナズナのクラスC遺伝子の欠損がほとんど心皮アイデンティティを失うのとは,対照的であった. 花の器官数が増加するFON1遺伝子を単離した結果,CLAVATA1(CLV1)様のLRR型受容体カイネースをコードしていること,CLV1とは発現パターンが異なるものの,茎頂,花序,花のすべてのメリステムで発現していることが明らかとなった.しかし,fon1変異は花分裂組織のみに大きな変異が生じ,茎頂分裂組織にはほとんど影響を与えない.したがってイネにおいてもCLAVATAシグナル伝達系がメリステムの維持を制御しているが,その維持機構は必ずしもシロイヌナズナとは完全に一致せず,イネ独自の機構も一部存在することが示唆された.
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