本研究ではシロイヌナズナのAtPGP4とAtABCA1の2種のABCトランスポーターの輸送特性を解析し、オーキシンの極性移動への寄与、さらにはオーキシン以外の植物ホルモンの膜輸送と長距離輸送に対する役割を明らかにすることを目指している。 AtPGP4に関して、今年度はそのプロモータ::GUSによる発現解析を行った。結果として、本分子種は根で高い発現を示すこと、および葉の鋸歯先端の排水装置で特徴的なシグナルを与えることが明らかとなった。また、種々の植物ホルモンによる発現応答を調べたところ、AtPGP4はサイトカイニン添加によってその発現量が増大することが認められた。T-DNAタグラインを用いた解析においては、AtGP4を発現していないホモ接合体を得たが、この個体は通常の生育条件では特に顕著なフェノタイプを示さなかった。最近、この膜蛋白質を昆虫細胞(Sf9)に発現させることに成功した。今後、AtPGP4の生化学的性質を明らかにしていく。 もう一方の分子種AtABCA1は、シングルコピー遺伝子であるが、哺乳類のABCA1は、コレステロールやリン脂質の輸送に関与することが知られ、本分子種はその植物オルソログに当たる。この分子に関して、プロモータ::GUSによる発現パターンを調べたところ、根、茎、葉の維管束で特異的に発現していることが明らかとなった。特に根と茎の分岐点で発現が高かった。この維管束特異的な発現は、芽生えから成熟植物体に至るいずれの生長段階においてもみられ、恒常的に軸方向に何らかの内在性物質を輸送している可能性が示された。維管束以外では、開花後の成熟した花粉で高いGUS活性がみられたことと、花弁が脱離する段階において特異的に、その莢の付け根部分で発現が明確に上昇することが認められた。
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