植物表皮の気孔は大気とのガス交換調節を行う重要な構造である。我々は高等植物における細胞分裂や細胞分化の仕組みを解明することを目的に、シロイヌナズナの気孔形成突然変異体を用いて孔辺細胞の発達に関わる遺伝子の単離・解析を進めてきた。本年度の本研究課題では特に孔辺母細胞の分裂に関する変異体(shabondama40)および分裂後の孔辺細胞形態構築に関する変異体(MC79)に着目して研究を進めた。 shabondama40は出芽酵母Sec31ホモログの変異体で、孔辺母細胞の細胞質分裂が不完全となる表現型を示す。RNAiを用いた培養細胞でのshabondama40遺伝子抑制系を用いて、Sec31タンパク質の植物細胞形態への関わりを示した。今後Sec31と複合体を形成して働くSec13タンパク質についても同様の手法で解析を進める。これらの研究により、植物細胞の細胞質分裂における小胞輸送装置の役割について理解を深める。MC79はleucine rich repeatを持つreceptor like kinaseの変異体で、孔辺細胞の伸長方向や湾曲方向が異常になる表現型を示す。MC79の発現パターンを知るためMC79-GFP融合タンパク質を用いた実験を行ったところ、メリステモイドから孔辺細胞母細胞の細胞膜で見られ、孔辺細胞発達の初期に機能していることが示された。また、その他に根の先端部分にも発現が観察され根の発達においてもMC79が働いていることが推察された。今後アフィニティークロマトグラフィーによりMC79複合体を精製し、パートナーとなるリセプターや標的因子、リガンドの同定を進める。これらの研究により、細胞の極性獲得、形態構築における情報伝達系の働きについて理解を深める
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