研究課題
トランストランスレーションは、翻訳が中断したmRNAからtmRNAへとリボソームが翻訳を切替えることで二つの分断された情報から一本のキメラペプチドを作り出す、変則的翻訳である。この反応を行うtmRNAは、tRNA様の構造を持つtRNAドメインとタグペプチドをコードするmRNAドメインの二つのドメインから成る。これまでの研究によりタグペプチドのコード領域のすぐ上流に翻訳再開のシグナルの存在が明らかになってきたが、それが何によって、またどのようにして認識されることで翻訳再開位置の決定が行われるのかという問題はいまだ解決されていない。本研究では、リボソームの小サブユニットのAサイトに結合することが知られているアミノグリコシド系抗生物質のtmRNAおよびトランストランスレーションに対する影響を調べた。まず融解温度の変化の測定により、パロモマイシンはtmRNAに2分子結合することを明らかにした。さらに化学修飾により、それぞれのパロモマイシン結合部位を特定した。2分子の結合のうちtRNAドメインへの結合はアミノアシル化に影響を与え、さらにはSmpBのtmRNAへの結合を阻害した。一方、パロモマイシンはトランストランスレーションの開始位置を-1だけシフトさせることを明らかにした。そしてリボソームに変異を導入することで、このシフトはパロモマイシンがtmRNAに結合することに起因するのではなく、リボソームのAサイトに結合することに起因することを明らかにした。さらに様々なアミノグリコシドの効果を調べた結果、ハイグロマイシンだけはシフトを誘導しないことから、トランストランスレーションのシフトはリボソームの小サブユニットのAサイトのA1492A1493のフリップアウトが原因であると結論づけることができた。現在、ピュアな因子からなるin vitroトランストランスレーション系を構築したところであり、この系を用いてさらなる解析を進めているところである。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
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