研究概要 |
アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)の神経病理学的特徴は、老人斑と神経原線維変化であり、これらは、神経細胞死と深い関わりがあると考えられている。近年、タウのアミノ酸の置換やスプライシング異常が神経原線維変化の形成の必要十分条件であることが明らかとなった。変異型タウ蛋白が如何にして神経原線維変化につながるかを解明するため、下記のA、B2つの手法を用いてモデルマウスを作成し、その解析を行っている。 A.ヒトの変異型タウcDNAをマウスのタウ遺伝子座に導入する。 現在、ヒトのタウcDNAを両方のタウ遺伝子座に導入したマウスを変異型APPのトランスジェニックマウスと交配して、変異型APPを持ち、なおかつヒトの変異型タウ蛋白のみを持つマウスの作製に成功している。現在このマウスの神経病理学的所見を光学、電子顕微鏡的観察により解析中である。将来的には (1)神経細胞数を定量的に計測してPHFと細胞死の関連を解析する(2)神経病理学的変化の前後における遺伝子の発現の違いや、それと細胞死などとの関連をDNAマイクロアレー法によって解析する予定である。 B.変異を持つヒトのタウcDNAを神経細胞特異的に過剰発現させるマウスを作製する。 Aでは病理症状が出ない可能性もあるため、ヒトのタウcDNAの発現レベルをさらに上げるために、Cre recombinaseを発現する組織や細胞だけでヒトのタウcDNAを過剰発現できるマウスを作製し、そのマウスと神経細胞特異的にCre recombinaseを発現するマウスをかけ合わせて神経細胞特異的に変異型タウを過剰発現させることも試みている。両者を交配したところ、double transgenic mouseは周産期に死亡すると考えられる所見を得たため、神経原線維変化などの病理変化が生じているか、解析する予定である。
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