研究概要 |
Transthyretin(TTR)は、127残基から成るβ-sheet蛋角質であり、生理的条件下では4量体を形成している。しかしながら、突然変異の影響によってアミロイドを形成し、familial amyloid polyneuropathy、senile systemic amyloidosisを引き起こすと考えられている。突然変異によってTTRが不安定化し、アミロイドが形成しやすくなっているのではないかと予想されており、これまでに80種類以上の変異体が発見されている。本研究では、2次元NMR法と重水素交換法を組み合わせることにより、アミロイドを誘発する突然変異が、TTR立体構造の局所的安定性をどのように変化させるのか調べる。 Fmilial amyloid polyneuropathyを引き起こすと予想されている13種類のTTR変異体の発現系構築を行った。構築した変異体は、V20I,S23N,P24S,L58H,L58R,T59K,E61K,S77Y,I84N,I84T,S112I,Y114H,Y116Sであり、すべて家族性アミロイドーシスの患者から発見された変異体である。TTR変異体の発現系は、QuikChangeTMSite-directed mutagenesis kits(Stratagene社)を用いて行った。^<15>N塩化アンモニウム(または、^<15>N塩化アンモニウムと^<13>Cグルコース両方)を含んだ重水最小培地で大腸菌を大量培養し、TTRの^2H/^<15>Nラベル体(または、^2H/^<15>N/^<13>Cラベル体>を発現させた。大腸菌を破砕後、イオン交換クロマトグラフィーとHPLCによってTTRを精製することができた。野生型TTRの^2H/^<15>N/^<13>Cラベル体について、pH5.75,40℃の条件でHNCA、NHCACB等のNMRスペクトルを測定し、NMRシグナルの帰属を行った。^2H/^<15>Nラベル野生型TTRを重水緩衝液に溶解し、^1H-^<15>N HSQCスペクトルを連続して測定することによって、野生型およびL58H,L58R,T59K,E61K変異体について各残基の主鎖アミドプロトン重水素交換速度を測定した。これらの結果から、L58H,L58R,T59K,E61K変異体では突然変異によって単量体構造のコア部分と四量体構造の二量体-二量体構造の相互作用部位が不安定化していることが明らかとなった。
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