研究概要 |
哺乳動物細胞のゴルジ体は層板構造を形成しているが、その形成と維持に機能する重要な因子としてGRASP65が知られている。GRASP65は細胞分裂期に顕著なリン酸化の上昇を示し、これが分裂期のゴルジ体の分散を引き起こす原因の一つとなっていると考えられているが、このリン酸化に関与するキナーゼやリン酸化部位の特定は進んでいない。我々は、SDS-PAGE上で移動度の違う2種のGRASP65が存在する事、また合成直後のGRASP65は高い移動度を示し、時間経過とともに低い移動度にシフトする事を発見した。アルカリホスファターゼ処理や種々のGRASP65欠失変異体を用いた解析により、このシフトは284番目のセリン残基(S284)のリン酸化修飾に起因することを突き止めた。さらにこの箇所に対する抗リン酸化ペプチド抗体(PS284)を作製し、間接蛍光抗体法による解析を行った結果、間期の細胞のゴルジ体にシグナルが認められた。細胞に血清やEGF刺激を与えると、ゴルジ体でのPS284抗体によるシグナル強度の上昇が観察された。このシグナル強度の上昇はMEK1,2の特異的阻害剤であるUO126存在下で抑えられた。また精製GRASP65に対し試験管内リン酸化反応を行った結果、S284部位はERK2によってリン酸化されることがPS284抗体を用いたイムノブロツト法によって確認された。これらのことから、細胞への増殖刺激がMEK-ERK経路を介してGRASP65のS284のリン酸化を引き起こしていることが示唆される。
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