研究概要 |
アミロイドーシスは本来生理的機能を持つタンパク質が構造変換を受け、微細な線維(アミロイド線維)に重合・沈着し生体に障害を与える『タンパク質のホールディング病』の一群の疾患の総称である。我々はこれまでAApoAIIアミロイドーシスのモデルマウスを用いて,アミロイド線維(Seed)によるアミロイド線維伸長反応促進がアミロイドーシス発症に重要な役割を担っていることを示してきた(アミロイドーシスの伝播)。このようなアミロイド線維による伝播に関して以下のような新たな研究成果を得た。1)家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)モデルマウス(hMet30TTR Tg^+,mTtr^<KO/KO>)にアミロイド線維(ATTR)を経口投与すると投与後18ヶ月以降にAApoAIIの沈着が認められ、同時にATTRの沈着も観察された。2)透析アミロイドーシスのモデル動物としてヒトβ2ミクログロブリントランスジェニックマウス(hB2M Tg^+, mB2m^<KO/KO>)を作成し、血清ミクログロブリン濃度が患者血清の数倍にまで達することが確認された。3)AApoAIIとAAアミロイドタンパク質及び線維間での相互作用(Cross-seeding)がin vivoで観察された。4)マウスAApoAIIタンパク質の部分的合成ポリペプチドを用いて、アミロイド線維形成にはN末端の無構造領域とC末端付近のβシート構造領域の両方が必要であることが明らかになった。5)AApoAIIアミロイド線維の伝播力の解析から、アミロイド線維構造が伝播に最も重要であることが示唆された。6)アミロイド原性の高いApoa2^c遺伝子のトランスジェニックマウス(mApoa2^cTg^+,Apoa2^<c/c>)を作成した。これまで利用してきたP1.R1-Apoa2^cマウスよりはるかに迅速なアミロイド沈着を観察した。
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