【目的】 小胞体ストレスは虚血、蛋白の糖鎖結合障害、小胞体内カルシウム濃度低下などにより起る現象で、misfoldingを起こした蛋白を除くためにBiPなどの小胞体シャペロンの誘導、さらに、小胞体の機能破綻によりアポトーシスが誘導される。小胞体に存在し、アルツハイマー病の原因として重要なプレセニリンは、それ自身限定分解(N-末断片、C-末断片)後に両断片が複合体を形成し、活性型となる。そこで、ツニカマイシンをマウス腹腔内に投与後96時間の時点で、腎臓でのプレセニリン-1のプロセッシング(成熟)を検討した。明らかに小胞体ストレスが起こり(BiP蛋白の増加)、投与前にはごく少量であったプレセニリン-1の断片の増加を認めた。すなわち、本研究は、小胞体での蛋白質品質管理機構によるプレセニリン成熟の制御機構の解明を目的とし、さらに、アルツハイマー病の神経細胞死の機構を解明する。 【研究実績】 1.小胞体ストレス刺激によるプレセニリン-1の発現調節:HEK293細胞およびマウス初代神経培養細胞への小胞体ストレス刺激にて、蛋白レベルでプレセニリン-1のN末断片および全長蛋白質の増加を認めた。 2.小胞体ストレスシグナルによるプレセニリン-1の発現調節機構:小胞体ストレス刺激にて活性化される転写因子(ATF6およびATF4)をHEK293細胞に遺伝子導入し、プレセニリン-1のmRNAの変化を検討した。これら転写因子がプレセニリン-1の発現調節機構に関与する知見を得た。 3.小胞体ストレスによるカスペース活性化機構:小胞体ストレス刺激によるプレセニリン-1(全長)の発現により、カスペース-12の凝集さらに活性化を誘導する機構を解明した。
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