植物におけるタンパク質分解は、液胞で行われる場合の他に細胞質およびオルガネラ内で行われるものがある。植物におけるタンパク質分解の機構の解明にはこの両者の解明が必要であるが、後者のシステムに関する知見は少ない。本研究は発現系の構築を中心として、植物のタンパク質分解機構の検討を行った。 1.FtsHプロテアーゼ:膜結合性のATP依存性プロテアーゼであるFtsHプロテアーゼの発現系の構築を行った。この酵素はATPと亜鉛依存的にカゼインを分解する。本初究で得られた発現タンパク質にもその活性が認められ、機能的に発現したものと思われる。 2.プロテアソーム:単子葉類のオオムギよりプロテアソームの精製系を確立した。その結果、オオムギ由来の26Sは、他種由来のものより安定であることを示された。この他、葉緑体の発達と退行と挙動をともにするプロテアソーム様活性を見出した。 3.SAG12プロテアーゼ:植物の老化時に転写活性が約100倍上昇するプロテアーゼで、植物のタンパク質分解に重要な役割を担うと考えられている。この酵素の大腸菌での大量発現系を構築した。現段階では細胞封入体であるが大量の発現タンパク質が得られている。 4.ロイシンアミノペプチダーゼ:タンパク質をアミノ酸レベルに分解するためには、アミノペプチダーゼが必須である。オオムギより3種類のアイソフォームを部分精製し、その性質の検討を行った。 5.アリューレイン:ホウレンソウの老化時に活性が10倍程度上昇するプロテアーゼの精製を行った。約1万倍に精製してN末端を解析したところ、アリューレインとホモロジーのあるタンパク質であることを見出した。
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