研究概要 |
細胞増殖や分化・移動などにかかわるErbBのリガンドであるニューレグリンは、膜型分子として合成され、それが細胞外の脂質二重膜近くで切断され、可溶化分子として放出されることが知られる。切断されないものは、膜型シグナル分子として細胞表面に提示される。この膜型分子を切断すべきかどうかどうか、細胞はどのように判断し、それらを選別するのだろうか。切断された分子はどのように選別されるのだろうか。またそもそも、切断するタイミング、場所はどのようなものか。 我々は、ノックアウトマウスの作成およびノックアウトマウスから調製した胎児繊維芽細胞を用いて、ADAMファミリーに属する膜型プロテアーゼメルトリンβが、神経や心臓の形成に関与すること、protein kinase C依存的なニューレグリンのプロセシングにかかわることを明らかにした(Kurohara et al., Developmental Biol., 2004)。しかも脂質二重層の上でシグナル伝達などの拠点であるraftが、膜型プロテアーゼメルトリンβと基質の膜型リガンドの出会う場所で、プロセシングの行われる「プラットホーム」であることを突き止めた(Wakatsuki et al., J.Neurochem., 2004.)。 さらに、細胞外リガンドドメインと細胞内ドメインにそれぞれYFP、CFPタグをつけたコンストラクトを作成し、これを用いてメルトリンβによる切断がどこで起こるか、PMAによりどのように活性化されるのかを追求中である。また、細胞外ドメインおよび細胞内ドメインがそれぞれそこからどのような運搬手段で運ばれ、どのような運命をたどるのか、も検討中である。
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