研究概要 |
DnaK分子シャペロン(DnaK,DnaJ,GrpE)は細胞内で合成途中のポリペプチドやタンパクfolding,サブユニットの会合,膜透過,分解等に働くことは良く知られ,それらの作用機構についての報告も多い.他方,複製開始因子や転写因子の活性化や不活性化を助ける機能を持つがこれらの作用機構の詳細は明らかにされていない.大腸菌ミニFの系はこの研究の一つのモデル系として優れている.我々はこれまでに,dnaK,dnaJ,grpE遺伝子に欠損を持つ大腸菌ではミニFが複製出来ないこと,DnaK分子シャペロンがRepEを活性化するのに必須であることを明らかにした.さらに,RepEの単量体がイニシエーターとして,二量体がrepE遺伝子のリプレッサーとして機能すること,in vitroでRepE二量体から単量体への変換はDnaK分子シャペロンによって行われることを明らかにした.この変換機構の詳細を分子レベルで明らかにすることが本研究の目的である.平成15年度の研究成果は(1)RepEの変異体の分離を昨年に引き続き行い,新たにとれた16個の変異体の変異位置を決めた.以前に分離した変異体と合わせ,これらの変異領域はRepEのDNA結合ドメイン,二量体形成ドメイン領域とも異なり,疑似二回対称体(RepE単量体の構造)の中心領域に位置した.現在,DnaK又はDnaJとの結合能を調べている.(2)RepE二量体の結晶化とその結晶構造解析を行った.正常RepE二量体はタンパク質が凝集しやすく結晶化が困難であるから,N末ドメイン(分子量約15kD)の結晶化を試みた.このN末RepEタンパク質は二量体であることを,架橋実験,沈降平衡実験,ゲル濾過の三つの方法を用いて確かめた.また結晶化に成功した.現在,結晶構造解析に向けて回折分解能を上げるために種々の試みを行っている.RepE単量体の構造はすでに明らかにしたので,RepE-DnaKまたはDnaJとの複合体の結晶化を計画している.これらの構造をもとに,DnaK分子シャペロンによるRepE二量体から単量体への変換機構が分子構造レベルで理解できると考えている.
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