研究概要 |
ABCGタンパク質を一例として、膜タンパク質複合体の品質管理機構を明らかにするため、ヒトABCG5,ABCG8遺伝子をクローニングし、HEK293細胞で一過的に発現させた。糖鎖解析から、ABCG5,ABCG8をそれぞれ単独で発現させたときには単純糖鎖付加型であり、ABCG5とABCG8を共発現させると複合型糖鎖が付加することが分かった。免疫染色を行い、ABCG8単独では細胞内に局在するが、ABCG5を共発現させるとABCG8が細胞膜上にも局在することが明らかとなった。これらから、ABCG5,ABCG8単独では小胞体に残留し、ABCG5とABCG8が複合体を形成したときのみゴルジ体以降に輸送されることを明らかにした。 RKR配列は、K_<ATP>チャネルなどの小胞体残留・逆送シグナルとして膜タンパク質複合体の品質管理に関与する。ABCG8のヌクレオチド結合領域(NBF)中の2箇所のRXR配列が、小胞体残留・逆送シグナルとなる可能性があるため、RXR配列をアラニンに置換した変異体(RLR196-198AAA,RRR218-220AAA)を作製し、局在を検討した。糖鎖解析と免疫染色から、ABCG8(RLRAAA)は単独発現でも共発現でも小胞体に局在し、ABCG8(RRRAAA)は単独発現時には小胞体に、ABCG5と共発現時には細胞膜上にも局在することが明らかとなった。従って、RXR配列の変異体でも、野生型と同様に単独発現時に小胞体残留が起こることが明らかとなった。野生型ABCG8とABCG8(RRRAAA)はATP類似体8-azido-ATPで光親和性標識されたが、ABCG8(RLRAAA)は光親和性標識されなかった。このことから、ABCG8(RLRAAA)変異体では、NBFの立体構造が崩れることで品質管理機構によって認識され、小胞体に残留することが示唆された。
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