本研究は、哺乳類時計たんぱく質の翻訳および分解調節のメカニズムと生理的意義について解析することを目的としている。哺乳類体内時計は、時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子群が形成するリズミックな遺伝子発現ネットワークによってうみだされている。まず、われわれはmPer2をテトラサイクリン依存性に発現可能なNIH3T3細胞株を作成し、mPer2の定常的な過剰発現に伴う細胞の概日リズム発現の変化を解析した。この結果、定常的に発現させるmPer2遺伝子の量依存的に概日リズムの減衰が見られた。このときのmPER2蛋白発現もしくは蓄積の調節がどのようになされているかを現在解析中である。 さらに、Tetシステムを利用して、定常的な時計遺伝子の発現を誘導できる遺伝子導入モデルマウスの作出を行っている。現在、tTA遺伝子が導入されたマウスが8系統およびrtTA遺伝子が導入されたマウスが16系統出来ており、それらについて詳細な発現パターンの解析を行っている。このモデルマウスは、基地の遺伝子の翻訳分解調節の解析のみならず、上記の研究から取得した新たな遺伝子の機能解析においても非常に有用な系であると考えられ、今後も引き続き計画を進めていく。 さらに、時計タンパクの翻訳ご就職の意義について、ルシフェラーゼとの融合タンパクにしたmPER2の量的な変動をリアルタイムに測定できる系を確立した。ルシフェラーゼとの融合タンパクにすることによって日生理的な性質を示す可能性があるが、mPER2の場合既にノックインマウスで野生型のmPER2とこの融合タンパクの間に、特に動態の違いが見いだされていないことが報告されている。その結果、定常的なmRNAの発現下でもmPER2-Luc融合タンパクはその蓄積に概日性の変動があることが確認された。それは、転写のリズムにくらべて非常に弱いものであるが、翻訳後の制御にも概日性の調節があることを示唆している結果である(投稿準備中)。
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