ユビキチンープロテアソーム分解系と分子シャペロンによる生体内のタンパク質の「分解」と「再生」の選別機構は、タンパク質の一生の重要な研究課題と位置付けられる。UBAドメインを含むユビキチン関連蛋白質は、品質管理とシャペロン機能、蛋白質の分解シグナル、ストレス応答に関わる調節制御を介して「分解」と「再生」の仕分けに重要な役割を果たしている。昨年度の本領域研究では、UBAドメインを含むユビキチン関連蛋白質Dsk2を同定し、そのC末端のUBAドメインを介したポリユビキチン鎖結合と、N末端のUbLドメインを介したプロテアソームとの結合によりポリユビキチン化蛋白質をプロテアソームに運ぶアダプター因子であることを明らかにした。本年度は、カナバニン、カドミウムなどの蛋白質翻訳ストレスに対するDsk2とその関連蛋白質を解析した。Dsk2とRad23のUBA-UbLドメインタンパク質がストレス応答に抑制的に働くことから、UBA-UbLドメインタンパク質はユビキチンープロテアソーム分解経路と分子シャペロン間を介在して「蛋白質の再生」を昂進する機能を持つと考えられた。次に、Dsk2と相互作用する蛋白質因子を酵母の2-ハイブリッド法によりスクリーニングして、Dsk2のUbLドメインに結合する新規因子Pth2を同定した。Pth2は翻訳中に異常アミノ酸を取り込んだポリペプチドをリボソームから切り離す蛋白因子で、Dsk2と同様にストレス応答に抑制的に働くことから、Dsk2と協調的に働いてシャペロン機能による蛋白質の「再生」を制御することが示唆された。ユビキチンープロテアソーム分解経路と分子シャペロンの振り分けにおけるアミノアシルtRNAペプチジルハイドロラーセによる新たな機能が推測される。
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