研究概要 |
ユビキチン様タンパク質SUMOは、イソペプイド結合することで、標的タンパク質の機能を変換する翻訳後修飾因子である。ユビキチンがタンパク質分解のためのタグ配列として働くのとは異なり、SUMOはタンパク質間相互作用の制御を通じて、タンパク質の輸送や分配、品質管理に関わるものと推定されている。ヒトやマウス、トリ、魚類といった脊椎動物にはSUMO-1とSUMO-2と呼ばれる2つのサブファミリー群があり、アミノ酸レベルで50%の相同性がみられる。SUMO-1はRanGAP1の修飾を介して核-細胞質輸送を制御しているが、SUMO-2はそうした効果はないと推定され、こうしたSUMOコードの違いを明らかにすることは、シグナル伝達や転写制御の分子機構の解明、さらには発生・分化・癌化のプロセスを理解するのに重要である。 1)SUMO修飾酵素群E1およびE2を、SUMOおよびその基質タンパク質と一緒に大腸菌体内で大量に発現させる系を確立した。この系で、SUMO化したリコンビナントRanGAP1,RanBP2,p53,PMLを大量に合成できるようになった。現在、SUMO-1修飾とSUMO-2修飾の生理的な機能の違いを、生化学的あるいは構造学的なアプローチで解析している。 2)SUMO-2に相互作用する因子を、マウスの初期発生(7日胚)由来のcDNAライブラリーより、酵母2ハイブリッド法を用いて検索した。約20個の因子が同定された。そのうち、未報告のものが約半数あり、発生初期におけるSUMO修飾の機能を探る上で、重要な遺伝子産物と考えられる。
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