1.分泌系での新生蛋白質のfoldabilityの解析を蛍光相関分光法(FCS)の装置のフォトンカウンティングを用いて、発現量とフォトブリーチングの相関として解析した。foldした場合には両者の間にはsaturation bindingと同じタイプの数式で表現される関係があることがわかったが、misfoldingをしているもののfoldabilityが維持されている場合にはそのような相関が観察されず、サブミリ秒レベルの動きが抑制されることを報告した。terminal misfoldingしている場合にはこのような現象は観測されない。これは、ランダム拡散を防ぐことによるterminal misfoldingを防ぐための機構が小胞体に存在する可能性を示唆する。 2.上記の仕事は、同時に小胞体内で新生蛋白質を動かす積極的な遅い動きが存在することを示唆する。しかし、これまで小胞体内での蛋白質の動きはランダム拡散によるものと考えられてきた。そこでネットワーク内での蛋白質の動きが制御される可能性について、主にFRAPを用いて解析したところ、高浸透圧で特異的に抑制されることを見いだし、よって、単純拡散でカーゴ蛋白が小胞体遷移領域まで運ばれるわけではないことを証明した。この認識は、2個以上のN型糖鎖が付加されたものに特異的であり、そのための受容体が存在するはずである。現在、カーゴと全く同一の挙動を示す小胞体レクチンの検索を行っている。これらの知見により、小胞体ネットワーク内での動きがpassiveなものではなくactiveなものである可能性が示唆される。なお、これはCOPIIコートの遷移領域からの解離が高浸透圧で阻害されることと機能的に合致すると思える。
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