AAA ATPaseファミリーに属するVCPは、異なるアダプタータンパク質の介在により、オルガネラ膜の形成やユビキチン-プロテアソーム系による異常タンパク質の分解など多様な細胞機能に関与する分子シャペロンである。VCPの新規アダプターとして同定されたSVIP (small VCP interacting protein)は、細胞内で過剰発現させることにより、ポリグルタミン病などの神経変性疾患において見られる小胞体由来の空胞の形成を導く。本研究では、VCP-SVIP複合体の役割を明らかにするために以下の解析を行った。 1.SVIP発現抑制の細胞機能への影響 平成15年度の研究において申請者らは、SVIPを細胞内に過剰に存在させると小胞体関連分解(ERAD)が阻害されることを示した。本研究では、SVIPのERADにおける機能を検討するために、siRNAを用いて細胞内のSVIPの発現を抑制した。この細胞において、ERADのモデル基質であるCFTRΔF508変異体の分解速度を解析した結果、その効率に顕著な影響は見られなかった。 2.VCP-SVIP複合体に含まれる他の因子の同定 VCP-SVIP複合体が小胞体の機能に果たす役割をさらに明らかにするために、酵母two-hybrid法により、この複合体に含まれる他のタンパク質の同定を試みた。SVIPの全領域をベイトとして用い、ラット肝臓cDNAライブラリーをスクリーニングした結果、VCPを含む複数のポジティブクローンが得られた。現在、これらのポジティブクローンについて、SVIPとの結合能などを詳細に解析している。
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