研究課題
細胞を構成するタンパク質の大部分は、最終的にオートファジーによりリソソームに運ばれ分解・再利用されている。オートファジーは細胞の代謝回転などに重要であるばかりでなく、発生・分化や様々な疾患とも密接に関係すると考えられている。タンパク質の一生を演出する分子基盤とその破綻を理解する上でオートファジーの実態を知ることは極めて重要であるが、その分子機構や生理的病理的意義には不明の点が多い。本研究では、オートファジーを担うオルガネラ・オートファゴソームの膜動態とフォールディング異常病や病原性細菌の細胞内侵入等の疾患におけるオートファジーの意義を明らかにすることを目指した。本年度は、細胞内に侵入したA群レンサ球菌をオートファジーが効率よく捕獲除去することを報告した。本菌は、ストレプトリシンOの作用でエンドソームから細胞質に進出する。それが引き金となってオートファジーが誘導され、菌特異的な捕獲と分解が起こる。オートファジー不能細胞では、菌は増殖し細胞外に出て感染を拡大する。一方赤痢菌も細胞質に現れるが、IcsBという蛋白質を分泌することでオートファジーによる捕獲を免れることも分かった。これらの結果は、オートファジーが細胞成分のみならず異物分解も行い一種の自然免疫として機能していることを初めて示すものである。またマウスが生まれた直後深刻な飢餓に陥り、それを克服して生き残るにはオートファジーが必要なことを示した。さらに細胞内で凝集し神経変性疾患の原因となる長いポリグルミタン鎖が、オートファジーを誘導することを、セミインタクト細胞を用いたアッセイ系で明らかにした。オートファゴソームが、微小管依存的に移動し、リソソームとkiss-and-run方式で融合することを見いだした。
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