細胞内で合成された蛋白質や酵素は、糖鎖や脂肪酸の付加、リン酸化、メチル化などの翻訳後修飾を受けて生理機能を獲得する。ホスホリパーゼD(PLD)は、アゴニスト刺激に応答して細胞膜ホスファチジルコリン(PC)を加水分解して脂質性シグナル分子のホスファチジン酸を産生するリン脂質分解酵素であるが、一級アルコールの存在下では加水分解反応よりもむしろPCのホスファチジル基を一級水酸基に転移するホスファチジル基転移反応を優位に触媒する。蛋白質のアミノ酸残基のうちセリンは一級水酸基を有していることから、我々は、PLDによって蛋白質・酵素分子中のセリン残基の一級水酸基にPCからホスファチジル基が転移され、蛋白質・酵素の機能が修飾されるという、今までに例を見ない新規の蛋白質翻訳後修飾の可能性を追求することを目的として解析を行った。 蛋白質セリン残基の一級水酸基がPLDによりホスファチジル化される可能性を追求するため、in vitroでPLDによりセリンがホスファチジル化を受けるか否かを[^<32>P]PCを用いて検討した結果、セリンはPLDによりホスファチジル化されることが明らかとなった。さらに、この条件下で、PLDに[^<32>P]が取り込まれることを見いだした。これらの結果から、PLDは自己ホスファチジル化される可能性が示唆された。 今後は、アゴニスト刺激に伴う細胞内蛋白質のPLDによるホスファチジル化とそれによる蛋白質・酵素の機能修飾について検討する予定である。
|