研究課題/領域番号 |
15032267
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研究機関 | 国立循環器病センター(研究所) |
研究代表者 |
小亀 浩市 国立循環器病センター研究所, 脈管生理部, 室長 (40270730)
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研究分担者 |
宮田 敏行 国立循環器病センター研究所, 病因部, 部長 (90183970)
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キーワード | 小胞体ストレス / ストレス応答 / ストレス蛋白質 / 分子シャペロン / 翻訳 / 蛋白質品質管理 / Herp / ATF4 |
研究概要 |
分泌タンパク質や膜タンパク質の成熟には、小胞体が重要な役割を果たす。そして、その内腔に構造不全タンパク質が過剰蓄積した状態を小胞体ストレスと呼ぶ。研究代表者らは、小胞体ストレスに応答して発現誘導される機能未知タンパク質Herpを発見した。本研究では、Herpの機能および小胞体ストレス時の翻訳機構を重点的に解析した。【膵臓機能に対する影響の解析】通常飼育下におけるHerpノックアウトマウスの表現型は野生型と大差ないが、糖負荷と脳虚血に対する抵抗力が低下していることを初年度に見出した。今年度、耐糖能低下の機序を解析した結果、膵臓におけるインスリン産生能がHerp欠損によって減弱化していることが示唆された。また、作製した抗Herp抗体による解析で、Herpはランゲルハンス島だけでなく腺房でも強く発現していることが判明した。【Herp欠損細胞の解析】Herpノックアウトマウス胚から繊維芽細胞を単離培養し、野生型と比較した。増殖能に差は見られなかったため、Herpは細胞増殖に関与しないことが示唆された。一方、Herpノックアウト細胞は、小胞体ストレスに対して脆弱性を示した。また、Herpは小胞体に蓄積した異常糖タンパク質の分解処理を促進することが明らかになった。【小胞体ストレスで翻訳されるタンパク質の特定】小胞体ストレス時にはタンパク質全般の翻訳が抑制されるが、例外として転写因子ATF4の翻訳は促進される。研究代表者らは、DNAマイクロアレイ技術を利用し、小胞体ストレス時に翻訳促進される分子はATF4のみである可能性が高いことを初年度に示した。今年度は、その仕組みの解明に焦点を移した。ATF4のmRNAは、本来のタンパク質をコードするORFの上流領域に3つのORF様構造をもっている。種々の組換えDNAを作製し、翻訳効率を比較した結果、2番目と3番目のORF様構造がストレス時の翻訳促進に重要であることがわかった。本研究によって、今後の小胞体ストレス研究の発展に結びつく重要な成果が得られたものと考えられる。
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