研究概要 |
長鎖アルキル基を有しない分子(非両親媒性分子)を用いたLangmuir-Blodgett(LB)膜は、(1)機能性を有する発色団を高密度に集積できること、(2)LB法が適用できる分子の種類を拡張できること、などの理由から注目を集めている。我々は、粘土単一層の上にイオン生分子や極性分子のLB膜を載せた粘土-有機物複合LB膜の作製を試みてきた。この系では、粘土とゲスト分子との組み合わせを適切に選べば、非両親媒性分子の配列制御も可能である。本研究では非両親媒性分子を用いた粘土LB膜を再現性良く作製できるようにするために、製膜メカニズムを中心とした基礎研究を進めている。今年度は,(1)粘土単一層とゲスト分子との吸着機構、(2)再配列が起きやすいゲスト分子によるLB膜が粘土との複合化でどの程度安定化されるのか、の二点を中心に研究を行った。その結果、粘土とゲスト分子との複合化は、(1)ゲスト分子による単分子膜が形成された後に生じるのではなく、ゲスト分子を粘土懸濁液上に展開してすぐに生じること、(2)粘土濃度が濃い場合に観測される大きな分子面積は、ゲスト分子間の接近によるものではなく、疎らにゲスト分子が吸着した粘土片同士の反発によるものであることが明らかとなった。また、再配列が起きやすいゲスト分子のLB膜は、粘土と複合化せずに作製した場合24時間以内にほぼ光第二高調波発生(SHG)不活性な膜に再配列してしまうのに対し、粘土と複合化するとSHG強度が24時間は減衰せず、48時間を経ても作製直後の約半分のSHG強度を示した。このように、粘土との複合化は再配列を大きく抑制する効果があることを明らかにした。 加えて、イオン性分子よりも複合LB膜を得ることが格段に難しい、極性分子を用いた複合LB膜の作製に関するノウハウを開拓し、非両親媒性極性分子を用いた多層膜を再現性良く作製することができるようになった。
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