研究概要 |
可視光応答型二酸化チタンにおける電荷注入直後の活性種を明らかにすることを目的として,電子スピン共鳴(EPR)スペクトロスコピーによる研究を行った。ナノサイズ二酸化チタンコロイド(平均粒径20nm)にキサンテン系色素を吸着させた色素増感二酸化チタン系では,一重項励起状態からの電荷注入後の電荷分離により生成した電子-ホールラジカルイオン対を検出した。時間分解EPRスペクトル線形解析から,電子-ホールラジカルイオン対間距離が1.5nmと決定された。二酸化チタン内捕捉電子は,Ti上に束縛されていることが明らかとなった。エオシンYにおいては,色素局在励起三重項状態が同時に観測され,これと電子-ホールラジカルイオン対の寿命から,両者は平衡にあり,マイクロ秒のオーダーで減衰することを明らかにした。 メカノケミカル法による窒素および硫黄をドープした可視光応答型二酸化チタンにおける光電荷分離状態を検討した。窒素ドープ二酸化チタンは,尿素を二酸化チタンと混合してメカノケミカル処理し,焼成した。硫黄ドープ二酸化チタンは,単体の硫黄を型二酸化チタンと混合して同様に処理した。いずれも,可視部に吸収をもち,77K可視光照射により光電荷分離状態のEPRスペクトルが観測された。信号は,自由電子より小さなg値領域は束縛電子,大きなg値はホールおよび吸着酸素ラジカルに帰属された。以上から,ホールサイトがドープした元素に依存し,EPRスペクトルが重要な情報を与えることを明らかにした。
|