研究概要 |
本研究者が明らかにしているように,水を多量に含みながら,3次元的に架橋したヘリックスからなるナノヘテロ構造を持ち,硬く弾力性のある材料を作る多糖類固体中においては,高速分子拡散や電荷伝搬が起こるので,新規な光/電子機能のための固体媒体としての応用が期待される.そのための基礎的研究と,色素増感太陽電池への応用を行った. 1)ミクロには液体でありながら固体状態を取る多糖類の基礎的な性質を調べた.アガロースやカラゲニンなどの固体中では分子は自由に拡散するが,自然対流が全く起こらないことを明らかにした. 2)この固体中では増感剤の光励起状態から電子受容体への電子移動が水溶液中と同じに起こることをすでに見出している.ここではさらに,このような固体状態でのRu(bpy)_3^<2+>からメチルビオロゲンへの光電子移動において,光定常状態における平衡がどのように変わるかを研究した.光照射下でのin situ可視部吸収スペクトルをダイオードアレーで測定できるように工夫し,光定常下でのビオロゲンカチオンラジカル(MV^+)濃度を測定した.水を多量に含むアガロース固体中では,MV^+の定常濃度が増加する速度は遅いが,光定常状態ではMV^+濃度が水溶液中よりずっと大きい事が明らかとなった. 3)本多糖類固体中にヨウ素系レドックス剤有機溶液を取り込んで電解質固体として用い,色素増感太陽電池を構成,液体系とほぼ同じ光電変換効率を示すことを明らかにした.交流インピーダンス法による解析により,二酸化チタン多孔質膜/電解質相界面,二酸化チタン内部,対極白金/電解質相界面,および電解質相内部の電荷伝搬は,液体型と固体型とほぼ同等なことを明らかにした.
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