研究概要 |
本研究では、紫外光照射によりメタンからエタン・プロパン等の炭化水素を室温で合成することが狙いである。石英製反応管に水を数滴共存させ、CH_4を流しながら紫外光を照射し、生成物をガスクロマトグラフで分析した。光源には200W低圧水銀ランプ(λ=185nm,254nm)を用いた。紫外光照射時の反応温度や水の量などの反応条件を変えて実験を行い、結果を比較した。CH_4と水を共存させると紫外光照射によりCH_4からC_2H_6、C_3H_8が高い収率で生成することが明らかとなった。C_3H_6やC_4H_<10>、C_4H_8の生成も確認された。反応管を加熱するとC_2H_6、C_3H_8の収率は増加した。光照射を止めると同時にC_2H_6、C_3H_8の生成は停止し、再度光照射を行うとC_2H_6、C_3H_8も生成し始めた。高圧水銀ランプ(λ>254nm)を用いると、C_2H_6、C_3H_8等は生成しなかった。したがってλ=185nmの光が有効であると云える。水の影響を調べるために、反応前に反応管を焼成(Heを流しながら673K・100min)し、紫外光照射を行ったが、C_2H_6、C_3H_8等の気体は生成しなかった。反応機構として、紫外光によって水分子が解離してOHラジカルを生じ、これがメタンの水素を引き抜きメチルラジカルが生成し、さらにカップリングによってエタンが生成するものと考えられる。エタンもOHラジカルによってエチルラジカルが生成し、メチルラジカルまたはエチルラジカルと反応してプロパンやブタンを生成するものと考えられる。FT合成に見られるようなオレフィン生成が観測されなかった事実はこのメカニズムを裏付けている。また、エタンと水との反応を調べたところ、C4およびC6のアルカンが生成することが明らかとなり、一般的に、アルキルラジカルのカップリングを起こすことが可能であると言える。
|