研究概要 |
1.分子ナノ集積化で誘起されるtpy固体発光 2,2':6',2"-テルピリジン(tpy)は、溶液中つまり単分子状態では発光を示さないが、板状結晶からΦ=0.2の強い青色発光を示すことを見出した(励起波長300nm)。溶液中では非蛍光性の分子が、結晶という組織化されたナノ集積構造を取ることで固体発光を示すという報告は非常に少なく、tpyの系は特異な例である。 2.ナノ集積様式に依存するtpy固体発光特性 Tpyは固相で、アモルファス、針状結晶、板状結晶という異なるナノ集積構造をとった。このうち板状結晶のみが強い青色発光を示し、アモルファスと針状結晶からの発光はほとんど見られなかった(Φ<0.01)ことから、ナノ集積様式が固体発光特性に大きく影響することが明らかとなった。 それぞれの結晶中でtpy分子は異なるコンホメーションを取っており、さらに分子軌道計算から、光励起状態特性が異なることが示唆された。また、針状結晶には多分子間相互作用の可能なπ平面のカラム状配列が見られたが、板状結晶では、πスタック二分子ユニットが互いに直交しており、多分子間相互作用の効果は小さいと予想された。 3.ナノ集積構造制御による固体発光スイッチング ヘキサンからの再結晶条件を検討した結果、板状結晶(強発光性)と針状結晶(非発光性)とを相互変換する条件を確立した。さらにこの再結晶プロセスを繰り返すことで、tpy固体発光の可逆的on-offスイッチングに成功した。 以上1〜3の成果は、ナノ集積構造と固体発光特性との密接な関与を証明しており、さらにナノ集積構造制御という方法論が、蛍光性有機分子で従来行われてきた分子修飾の手法に加え、固体超分子発光材料の開発に有用な指針となることを明らかにできた。
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