1.ジアルキルアンモニウムとバナジン酸ゲルの複合LB膜およびバナジン酸単独のナノ薄膜の作製 ジアルキルアンモニウムとバナジン酸ゲルを複合化した単分子膜は一辺1μmの矩形領域で表面粗さ1nm以下の非常に平滑であるが、これを焼成して得たバナジン酸単独のナノ薄膜も膜の平滑性は基本的に変わらなかった。しかし焼成後の膜には一辺が約100nm、深さ約1nmの矩形欠陥がところどころに生じていた。焼成時の脱水縮合によりバナジン酸が収縮すること、およびバナジン酸が厚さ約0.9nmの層状結晶であることを考え合わせると、焼成時に矩形の欠陥を生じながら単分子膜全体のひずみを緩和していると理解できる。交流インピーダンス法によりフラットバンド電位を測定すると、未焼成膜で約-0.1V、焼成後には約0.1V vs.Ag^-Ag^+であった。キャスト膜や単結晶と比較して、今回作製した複合LB膜および焼成膜は約0.5V卑側にシフトしていることがわかった。 2.ジアルキル側鎖を持つテニウムトリスビピリジル錯体(DCnRu)とバナジン酸の複合LB膜の作製と発光挙動の印加電位による制御 ジアルキル側鎖を持つルテニウムトリスビピリジル錯体の複合膜を作製し、この膜中でのルテニウム錯体の発光スペクトルを観測した。エネルギー準位の関係から、得られたルテニウム錯体とバナジン酸の複合LB膜中ではルテニウム錯体の発光は完全に消光された。ところが、ITO電極上に作製したDCnRu-バナジン酸複合LB膜を作用極として塩化カリウム水溶液中で電位を印加すると、バナジン酸のフラットバンド電位に相当する0 V vs.Ag^-Ag^+の印加でルテニウム錯体に特有の発光スペクトルが観測された。この現象は、電位印加によってバンドにゆがみが生じて電子移動を抑制し通常の発光スペクトルが観測されたと考えられ、電位操作によって発光挙動を制御できることがわかった。
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