研究概要 |
1.素子特性に対する金属電極の効果 有機薄膜太陽電池における光起電力は、基本的に二つの電極の仕事関数の差に由来するビルトインポテンシャルによって発生すると考えられる。しかし、有機太陽電池に用いられる代表的有機物については、観測される光起電力の大きさは、金属の種類にほとんど依存しないことがわかった。これは、これらの有機分子は多段階の酸化還元を起こすことから金属と電子交換を行うため、ビルトインポテンシャルの大きさが有機物の性質で決定されることによると考えられる。なお、発生する光起電力が有機材料の種類には大きく依存することも見出した。 2.光電流のバイアス極性に対する依存性 光電流は逆バイアス印加時のみならず、順バイアス印加時にも発生すること、さらに、バイアス条件によってそのスペクトルが大きく異なることを見出した。そのスペクトルの解析から、例えば銅フタロシアニン(CuPc)/ペリレン誘導体(PV)積層型素子の場合、逆バイアス印加時にはCuPc, PVのいずれの光励起によっても光電流を発生するが、順バイアス印加時にはPVの吸収のみが光電流発生にきいていることが明らかになった。順バイアス条件での光電流は、有機/有機界面に蓄積した電荷とPV中に生成した励起子の間で起こる電荷分離によると結論した。 3.光電流生成ダイナミクスの解明 有機薄膜型太陽電池においては、励起子の生成、励起子の拡散、有機/有機界面での電荷分離、有機層内の電荷の移動が、動作機構を考える上での最も重要な因子であると予想される。我々は素子にパルス励起光を照射し、生じる過渡光電流の時間変化を調べることで光電流生成ダイナミクスの解明を試みた。その結果、過渡光電流応答には、寿命の長い成分(数マイクロ秒)と短い成分(数百ナノ秒)があり、短寿命成分は電場の大きさに大きく依存するのに対し、長い成分はあまり依存しないことを見出した。
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