1.硫黄および炭素カチオンドープによる可視光応答型二酸化チタン光触媒の開発 光触媒の光の利用率を極限まで向上するために、通常では紫外光照射でしか活性を発現しない二酸化チタン粒子を可視光で活性を発現する触媒へ変換するための調製法の開発を行った。 すでに研究代表者は硫黄カチオンを二酸化チタンにドープすることにより可視光照射下で活性を発現することを報告した。さらに、可視部の吸光係数を極限まで向上させることを目的としてそのほかのドープ元素について探索を行った。その結果、私は炭素原子を好気条件下で特殊な焼成用の反応器を用いて反応させることにより、通常アニオン状態にある炭素原子を酸化してカチオン状態とし、イオン半径を減少させることで二酸化チタンの結晶格子間に導入することを世界で初めて成功した。炭素カチオンをドープした二酸化チタン光触媒は、昨年、報告した硫黄元素をカチオン状態で二酸化チタン光触媒に導入したものに比べて可視光領域の吸収がさらに増大した。この粒子の吸光度は、現在市販されている窒素アニオンドープや格子欠陥型の可視光応答型二酸化チタンと比べて大きく増大した。また、メチレンブルーや2-プロパノールの酸化活性に関して検討したところ、350nm以上の紫外と可視領域の広い波長範囲の光照射下では、アナタース型の二酸化チタン光触媒に比べて数倍の触媒活性を示した。更に、400nm以上の可視光照射下では、アナタース型の二酸化チタン光触媒が全く触媒活性を示さないのに対して、炭素カチオンドープ二酸化チタン光触媒は、極めて高い触媒活性を示した。 2.表面修飾型二酸化チタン光触媒の開発 紫外光照射下では、二酸化チタン粒子の表面は超親水性の傾向を示す。このような特性は、水中で有害物質などの分解反応に対して、触媒表面と有害物質の親和性を低下させ、触媒活性の著しい低下をもたらす。このような問題を解決する目的で疎水性官能基を有するシランカップリング剤を用いて二酸化チタン粒子表面を修飾し、疎水性環境の構築を試みた。その結果、C4-C18の長さの炭化水素鎖で修飾することで疎水性のアルデヒドに関して分解活性が5倍程度向上することが明らかになった。
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