研究概要 |
二酸化チタンを用いた光触媒殺菌では,光励起により生じる活性酸素種が殺菌種であり,不活化速度の決定因子は,対象細胞の光触媒表面への吸着と光触媒活性(活性酸素種生成効率)によって支配されると考えられる.まず,不活化速度と二酸化チタンの結晶構造による活性酸素種濃度の違いに着目し,アナターゼ粒子とルチル粒子を種々のアナターゼ配合率となるように混合した二酸化チタン懸濁液中で,ファージの不活化を行ったところ,アナターゼ配合率70wt%において不活化速度定数kが最大となった.種々のアナターゼ配合率において,二酸化チタンに対するファージ吸着量q_Tを求め,吸着量あたりの光殺菌活性としてk/q_T値を算出したところ,アナターゼ配合率70wt%のとき最大となり,アナターゼ配合率により活性酸素種生成が変化することが明らかになった.ラジカル・スカベンジャーの添加効果を調べたところ、マンニトール添加の結果よりアナターゼ配合率70wt%においてヒドロキシルラジカル濃度が増加することが示された.一方,二酸化チタンと微生物細胞との相互作用において,その生物学的効果について検討した.活性酸素除去酵素活性を欠損した大腸菌は好気条件下ではその増殖速度は低下するが,二酸化チタン光触媒共存下での培養では,逆に増殖速度が野生型と同等まで回復し,かつ細胞内活性酸素量が減少することがわかった.DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイルより,機能未知タンパク質とされているもののうち,その発現量が顕著に増加しているものを新規な抗酸化タンパク質の候補として選定した.
|