表面吸着高分子系における超長寿命電荷分離状態の生成とその最適化条件の探求

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15033242
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 宮坂 博 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (40182000)
• 研究分担者: 長澤 裕 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (50294161)
• キーワード: 電子移動 / 電荷輸送 / 長寿命電荷分離状態 / 光電導性高分子 / 時間分解分光 / ホール輸送

研究概要

多孔性表面をナノメートルから数十ナノメートル以上のサイズから見ると、ある程度規則的に表面物性の異なる部位が並んだ場と見なすことができる。このような表面に側鎖(吸着する部位)を有する高分子のように規則性を有する系を吸着させた場合、表面物性の異なる部位の規則性(あるいは周期構造)と吸着部位の規則性(側鎖間の距離)が異なる事が一般的には期待でき、最も単純に考えると表面の規則性の単位長さと吸着される高分子の単位長さの最小公倍数毎に側鎖は吸着される。本研究では、多孔性表面上に高分子化合物を吸着させた系での電子移動過程のダイナミックスとメカニズムを対象とし、機能性界面・表面における長距離電荷輸送と超長寿命電荷分離状態の生成に関した最適化条件を獲得することを目的とした。平成15年度は、(1)いくつかの代表的なイオン交換樹脂などを用いることで異なる多孔性表面(規則長)を持つ系での電荷再結合過程の観測、(2)ホール移動(電荷輸送)に関する基礎的な反応支配因子の解明、(3)長時間領域の測定システムの3点から研究を行った。その結果、(1)に関しては、局所トラップの吸着サイトの存在が超長寿命電荷分離状態の生成に、不可欠な条件となることを確認できた。また、(2)については、フェムト秒レーザー過渡吸収二色性の測定を行い、3-5psの時定数で減衰するカチオン状態の信号減衰を観測し、カチオン状態の非局在化によるイオン対間のクーロン引力の減少が、後続の電荷輸送に有効な役割を果たすことを明らかにした。また(3)の装置開発については新規測光系を構築し、より信頼性の高い測定系を完成した。

研究成果

• [文献書誌] H.Miyasaka: "Photoinduced electron transfer dynamics in aromatic vinyl polymers and related systems : Tim e-resolved detection of primary events."J.Photochem.Photobio.C.. 4, 3. 195-214 (2003)
• [文献書誌] H.Miyasaka: "Picosecond and femtosecond laser photolysis studies of a photochromic diarylethene derivative : multiphoton gated reaction."Chem.Phys.Lett.. 371, 1-2. 40-48 (2003)
• [文献書誌] S.R.Khan: "Picosecond laser photolysis studies on photoinduced electron transfer processes in poly(1-vinylpyrene) in solutions."Phys.Chem.Chem.phys.. 5, 6. 1003-1009 (2003)
• [文献書誌] H.Matsuda: "Development of kinetic analysis system in pump-probe measurement based on femtosecond chromium : forsterite laser and its application to S_1-S_0 relaxation dynamics of azulene"J.Photochem.Photobio.A.. 156, 1-3. 69-75 (2003)
• [文献書誌] S.R.Khan: "Picosecond electron transfer dynamics in polymer systems in solutions : cellulose tris (9-ethylcarbazolyl-3-carbamate) and amylose tris(9-ethylcarbazolyl-3-carbamate)"J.Photochem.Photobio.A.. 161, 1. 35-42 (2003)
• [文献書誌] Y.Tsuboi: "Nonlinear photophysics and ablation of liquid naphthalene derivatives : fluence-dependence of luminescence spectra upon 248 nm laser excitation."J.Phys.Chem., B.. 107, 17. 3017-3023 (2003)