ナノサイズフォージャサイト型ゼオライトの合成を行い、Nd(III)を導入し、かつbis(perfluoromethylsulfonylamide)をカチオンに配位させると配位水を低温で効果的に配位圏から排除することができ、ゼオライト細孔内のNd(III)から近赤外フォトルミネッセンスを取り出すことに成功した。発光寿命を検討した結果、ゼオライト中には短寿命な発光種および長寿命な発光種の2種類が存在することが示された。Nd(III)導入量を増加させると短寿命種から、長寿命種へとNd(III)の化学構造が変化することが結論できた。エネルギー移動に関わらないLa(III)で希釈することにより、発光効率最適化へのエネルギー緩和過程の制御が可能であることを明らかにした。 希土類カチオンのf-f遷移が禁制であることは、直接励起によるフォトルミネッセンスの強度は原理的に増大させることはできないことを意味する。光増感剤の導入による増感発光が重要である。上述強発光性Nd(III)を有するナノゼオライト細孔に有機増感剤として8-キノリノールを導入し、初めて、増感に成功した。 ゼオライト細孔内にship in bottle合成が可能である。Ru[bpy_3]^<2+>を増感剤として用い、光吸収とNd(III)発光が異なるケイジで起こるシステムを構築し、その発光特性について検討した。Gd(III)の導入されたサンプルに比べてNd(III)の導入されたサンプルの^3MLCT発光強度は減少した。また、^3MLCTの発光寿命が減少したことから、[Ru(bpy)_3]^<2+>の^3MLCTからNd(III)へエネルギー移動が確認された。寿命測定からエネルギー移動効率は、Φ_<ET>=0.63と、高い値を示すことがわかった。Nd(III)の発光波長を検知した励起スペクトルにおいて^1MLCT遷移が観測された。これより、エネルギー移動を経たNd(III)発光が得られることが分かった。ゼオライト細孔内における錯体増感系の初めての例である。
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