研究概要 |
主として熱反応に限られる不斉合成反応の目覚ましい発展に比べ、光反応に不斉を導入した不斉光反応は未開拓の分野として残されている。特に環状α,β-不飽和ケトンとオレフィンとの[2+2]光環化付加反応は、熱反応では合成困難な4員環化合物を効率良く構築する合成手法として優れているが、不斉反応への展開は殆ど見られない。そこで本反応をターゲットとし、様々なキラル化合物との界面相互作用を利用した高選択的不斉[2+2]光環化付加反応の開発を目的とする。 1.キラルアミノアルコールをいたエナンチオ選尺的光環化付加反応 様々なキラルアミノアルコール存在下で、シクロペンテノンとエチレンとの反応を検討したところ、エナンチオ選択的に光反応が進行することを見出した。特に、アミド基を有するシクロペンテノンとL-Valinolを5等量用い、塩化メチレン中、-78℃において48%e.e.の選択性を達成した。CDスペクトルを用いたJob plotから、反応基質とアミノアルコールは1:1で錯形成していることが示された。 2.固相担持型不斉補助基を用いたジアステレオ選択的光環化付加反応 芳香族メンチル誘導体を有する新規光学活性Wangポリスチレンレジンを合成した。これにシクロヘキセノンを担持し光反応を行ったところ、均一溶液の反応と同程度の選択性で光反応が進行することを見出した。さらにレジンにポリエチレングリコール鎖をリンカーとして導入すると、光反応のみならず、基質の着脱反応の効率が飛躍的に向上した。合成した光学活性レジンは、光付加体の切り出し後容易に回収できるとともに、その再利用にも成功した。
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