1)共有結合型及び非共有結合型ビタミンB12修飾電極を作製し、電解脱塩素化反応に成功していた。またビタミンB12錯体を触媒として用い、環境汚染物質であるDDTの分解反応にも成功した。さらに、光還元作用を示す[Ru^<II>(bpy)_3]^<2+>を用いることで、可視光照射により、Co(I)種の生成及びCo-C結合の開裂が可能となるクリーンシステムを構築した。その結果、DDTの98%が消失し、DDDが主生成物として71%の収率で得られた。暗所下やB12錯体なしでは反応はほとんど進行しなかった。本システムは、錯体触媒の活性化法として可視光のみを利用したクリーンシステムと言える。 2)酸化チタンの光照射により生成する伝導帯の励起電子は、-0.5V vs. NHE (pH7.0 H_2O)の還元力を有することが報告されており、この電位はビタミンB12錯体をCo(I)種へと還元することが可能である。そこで側鎖にカルボキシル基を有するビタミンB12錯体を合成し、酸化チタン表面に固定化したハイブリッド触媒を創製した。元素分析から見積もった錯体の固定化率は7.0x10^<-11>mol/cm^2であり、比較的高濃度で酸化チタン表面に固定化されていることが明らかとなった。このように調整したビタミンB12ハイブリッド酸化チタンをエタノールに懸濁し、紫外線照射(ブラックライトを使用)すると、Co(I)種の生成を示す暗緑色へと変化した。そこで、基質としてDDTを加え、光照射しながら反応させたところ、主生成物としてトリ脱塩素体であるDDAが得られた。ビタミンB12錯体を酸化チタン表面に固定化することで、好気性条件でもCo(I)種の生成が可能となり、脱塩素化・酸素添加反応が進行したものと推察される。
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