研究概要 |
二酸化チタンを光触媒とする各種芳香族化合物の高効率・高選択的な光酸素酸化反応の開発と、反応活性種および反応機構の解明を目的として研究を行ない、以下の成果を得た。 (1)二酸化チタンおよび過塩素酸マグネシウム存在下、メトキシ基をもつ1,1-ジアリールエテンのアセトニトリル溶液に酸素を吹き込みながら>280nm光を照射すると、3,3,6,6-テトラアリール-1,2-ジオキサン誘導体がほぼ定量的に得られた。1,1,8,8-テトラキス(p-メトキシフェニル)-1,7-オクタジエンに同様の条件下光照射すると、分子内で閉環したジオキサン誘導体が高収率で得られた。これらの反応は過塩素酸マグネシウムなどの無機塩を添加することにより著しく促進された。置換基効果や無機塩の効果および溶媒の効果により、本反応が電子移動機構によって進行するものと推定した。 (2)二酸化チタンおよび過塩素酸マグネシウム存在下、p-メトキシケイ皮酸のアセトニトリル溶液に光照射したところ、対応するp-メトキシベンズアルデヒドが生成するとともに、p-メトキシケイ皮酸のシス-トランス光異性化反応が進行した。メトキシ基をもつケイ皮酸エステルやケイ皮アルデヒドを用いた場合にもp-メトキシベンズアルデヒドが得られたが、収率は低下した。また、アセトニトリル中でp-メトキシケイ皮酸を二酸化チタンと混合することにより、黄色の着色が観測された。それらの懸濁液を遠心分離することにより、p-メトキシケイ皮酸の二酸化チタンへの吸着種を得た。本反応ではカルボキシ基が酸化チタン表面に吸着することにより一電子移動が促進され、酸素酸化反応が進行するものと推定した。
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