本研究は、有機固体薄膜を用いた光機能電子素子(光導電素子、太陽電池、発光素子、光スイッチング素子など)の光-電流変換効率や時間的応答性を飛躍的に向上させるために要求される基本的条件を明らかにすることを目的としている。特に、電極/有機膜界面および有機/有機界面の果たす役割に焦点を絞り、高応答性を実現するための界面の化学的制御に関する方法論を確立するために、電極/有機膜界面を大環状π電子系分子や三次元π電子系材料によるナノ超薄膜で化学的に修飾することによって、機能性ナノ超薄膜を介する効率的な電子伝達を実現し、光機能素子としての可能性を探索する。有機分子からなる光素子を化学結合によって強靭かつ稠密な自己組織化超薄膜を作製し、その光機能素子としての性能を向上させる手法の確立することによって、光が関わる界面での当該分子素子の果たす役割を解明するため、平成15年度は、有機溶媒への可溶性が高いシリル基やカルボキシル基などの官能基を有するポルフィリンやフラーレンのような2次元ないしは3次元系π電子系有機化合物をITOなどの電極表面に化学的に結合させ、さらに金コロイド層を電極界面上にイオウ原子を介して分散被覆することによって、ナノメータサイズの金コロイドを含む新規な界面を作成することを目標に、標的分子の合成をおこなった。有機薄膜作製技術として、分子配列制御性に優れ、かつ稠密な有機薄膜を作製した例として、自己組織化能で配列した分子の官能基どうしの反応によって強固な有機薄膜を段階的に積層し、構造制御性に優れたRu金属錯体有機薄膜を作製し、光伝導挙動を報告した。また、π電子系物質を拡張する目的で、カーボンナノチューブの高分散化およびラジカル反応による官能基化を行った。
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