研究課題
プラスチックフィルム型色素増感太陽電池の作製に必要な半導体膜の低温成膜として、これまでに進めてきた泳動電着法による酸化チタン多孔膜の形成方法を、製造により適した塗布法に転換を試みることを実施した。すなわち泳動電着粒子の化学的結合(ネッキング)処理に用いた水性酸化チタンゲルをあらかじめ結晶性ナノ粒子に混合し、これを分岐状アルコールと水の混合溶媒に分散することを試みた結果、この分散方法で粘性のペーストを、樹脂バインダーを添加せずに調製できることを見出した(バインダーフリーTiO_2ペーストの開発)。このペーストを導電性フィルム電極(ITO-PETフィルム)へ被覆して150℃で固定化した酸化チタンメソポーラス膜(厚さ10μm)はヨウ素系有機電解液中で5.3%のエネルギー変換効率、0.7V以上の光起電力を与え、泳動電着法による効率を超えるレベルに達した。さらに、多層塗布法によって粒径の大きい層を光反射層として積層した系では、光学的閉じ込め効果によって最大5.7%まで効率を向上させることができた。この方法に基づいて、セルを平面電極上で集電グリッドを用いて直列に組み合わせた大型のフィルム太陽電池のモジュール(15×15cm)を試作した。フィルム色素増感電池として初めての製作例である。8セル連結型のモジュールでは太陽光下で5.5V、屋内照明下でも4.5V以上の起電力を得ることを検証した。また性能上の発見として、色素増感太陽電池の特徴といわれる「拡散光の利用効率の高さ」がこのプラスチックモジュールを用いて確かめられ、浅い入射条件(入射角30°)ではシリコン結晶太陽電池の2倍以上の利用効率で光電流を出力することが明らかとなった。大型化することにより集電能率が低下することから、現在のモジュール性能は効率2%のレベルであるが、今後はグリッドの材料と成膜条件を改善することによって光電流効率を高め、高効率化を図る。
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