研究概要 |
^1.導電性高分子/酸化チタンの電子移動 酸化チタン薄膜上の導電性高分子の微小構造と電子移動ダイナミクスの関係を時間分解SNOMにより解析した。PPV誘導体やポリフルオレン(PF)誘導体POを増感色素として吸着させた処,POはガラス基盤上でも数十psから650psにわたる非指数関数的な減衰曲線を示すが,酸化チタン基盤上では電子移動による主に数psの寿命を持つ非指数関数減衰を示した。蛍光ダイナミクスの場所依存性も余り見られず,ホイール構造の高い領域でも効率の良い電子移動が観測された。このことは,局所的に電子移動した後もホールが高分子中で効率よくホール移動しているものと考えられる。寿命解析からPOはMEH-PPV等よりも増感導電性高分子として有望である事がわかった。また,SNOMチップ先端における非指数関数的減衰から,数十nmの領域においても電子移動分布を考慮する必要があることを示唆している。 2.SNOMを用いた励起エネルギー移動の解析 アントラセンの結晶薄膜を融解加圧法および昇華法により作製し,その構造と局所領域のダイナミクスを時間分解SNOMにより解析した。その結果,融解加圧法で作製した結晶薄膜ではトポ像と蛍光像の不一致が観測されると共に発光寿命の場所依存性が大きく寿命も数nsと短く,結晶内部に多くの欠陥が存在している事が明らかになった。一方,昇華法では表面構造に不均一性があるもののトポ像と蛍光像が一致し,寿命の場所依存性もなく,欠陥の極めて少ない構造であるととが分かった。一方,ペリレンをドープしたアントラセン薄膜を昇華法で作製した処,モル比で10^<-7>程度の極めて薄いペリレン濃度でも励起子拡散により励起エネルギー移動が起こっていること,また,薄膜結晶の溝部分にべリレンが多く存在しており,結晶成長過程を反映した構造であることが時間分解SNOMの解析から明らかになった。 さらに,基盤上のフォロクロミック分子が光昇華する事を走査プローブ顕微鏡により明らかにした。
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