研究概要 |
前年度、室温大気圧下でNaX担持フェナントレン(Phe/NaX)とTlXを混ぜるとTlX粒子から燐光を観測できること、および、NaX担持クリセン(Chry/NaX)とNaX担持1,2,4,5-テトラシアノベンゼン(TCNB/NaX)を混ぜることによりCT発光を観測できること等を見出し、蛍光顕微鏡を用いてゼオライト粒子間の分子移動を研究する手法を提案した。しかし、移動の詳細なメカニズムが明らかでないこと、および、移動の方向性(Chry/NaXとTCNB/NaXの混合系でChryがTCNB/NaXへ移動するのか、TCNBがChry/NaXへ移動するのか、または両者が移動するのか)が明確でないこと、など未解決の問題があった。そこで、直径約3μmのゼオライト粒子を顕微鏡下で移動させることで(1)ゼオライト粒子間の距離と発光強度の関係、(2)距離と移動方向の関係、(3)ゼオライトの種類による方向性の違いを調べることを目的とした。 (1)ゼオライト間の距離と発光強度の関係 Chry/NaX粒子とTlX粒子をスライドガラス上に接触した状態に配置するとTlXから燐光が強く観測されるが、μmオーダーで粒子間距離を離すとその強度が明らかに減少する。これはゼオライト表面上に沿って移動するメカニズムの寄与が大きいことを示している。 (2)距離と方向性の関係 Chry/NaX粒子とTCNB/NaX粒子をスライドガラス上に離して配置するとTCNB/NaXではCT発光が生じるが、Chry/NaXではなかった。これはスライドガラス上をTCNBが移動できないためであると考えられる。しかし、これらを接触された状態に配置するとTCNB/NaXにCT発光がやはり見られたがChry/NaX側ではCTができず、Chryの発光強度が急激に減少した。 (3)ゼオライトの種類による方向性の違い Chry/NaX粒子とTCNB/NaY粒子で同様の実験を行ったところ、それらを離した時は先と類似しTCNB/NaY粒子側でCT発光が見られたが、接触させた時は、逆にChry/NaX側にCT発光が見られた。先の例よりもTCNBのChry/NaXへの移動が増大したためと考えられる。
|