「光機能界面」としてゼオライト吸着系を取り上げ、吸着有機分子の吸着状態や拡散運動とそれに基づく化学反応について、光化学的手法を用いて調べることを目的として研究をおこなった。昨年度までに、顕微蛍光画像計測を手段として、マイクロメートルサイズのゼオライト粒子間の吸着分子の移動・反応を観測し、その機構を明らかにすることに取り組んだ。この研究の過程でゼオライト微粒子ごとの分子の分布の不均一性が顕著であることが明らかとなった。ゼオライトやシリカゲルなどの吸着系では、従来マクロスコピックな測定においては非指数関数的な蛍光減衰が観測され、これは分子ごとの置かれる環境の不均一性や会合等の分子間相互作用の不均一性に帰されることが多かった。ここでは、マクロ世界と分子論的世界の中間的なマイクロ粒子単位の現象が観測できると考えて、粒子ごとの不均一性を発光強度、発光寿命、発光スペクトルなどの直接測定により観測し、考察した。1.粒子ごとの発光強度分布 粒子ごとの発光強度をNDフィルターによって切り分けして表すと、発光強度は明るいものから暗いものまで一桁以上変化する。この結果はゼオライトにおいて粒子ごとに担持量の不均一が生じることを示す。2.粒子ごとの発光寿命 Peryleneでは1.0×10^<-8>mol/g程度の低担持量では各粒子の蛍光減衰は単一指数関数に近く、しかも寿命は粒子に依存しない。すなわち、11個の粒子に対して、τ=4.23±0.08nsであった。高担持量においは粒子ごとの減衰速度が異なる。この場合、非指数関数的減衰となるため、近似的に2つの指数関数の和で表すと、11個の粒子についてτ_1=0.82±0.21ns、τ_2=3.47±0.70nsが得られた。担持量を変化させたサンプルについて観測した結果、高担持量において明らかに蛍光消光が観測された。Peryleneでは高担持量でエキシマー発光(600nm)の生成が起こるためこの消光反応はエキシマー形成による。粒子ごとに担持量が不均一であるためエキシマー生成の割合が異なると考えるとこの結果は理解しやすい。
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