半導体中の磁性不純物は局在したd共鳴状態を持ち、LDAはそれをほぼ定性的には正しく扱っているが、実際の共鳴準位はLDAで予想されるものより3〜4eVほど低いところにある。光学的な意味の共鳴準位をコーン・シャム方程式のエネルギースペクトラムと比較することはできないが、このような不一致がLDAに起因している可能性がある。このような不一致は磁気的性質、凝集的性質、線形応答にも影響を及ぼす可能性が高く、定量的な議論を困難にしている。このような問題を解消して、より信頼性のある理論を構築するために、非一様系に対する乱雑位相近似(RPA)により得られる交換相関エネルギーを密度汎関数法に用いて、LDAに頼らず、希薄磁性半導体の電子状態を取り扱う実用的な方法を開発した。局所ポテンシャルを用いてコーン・シャム方程式をつくり、基底状態を構成することに重点をおいて、最適化有効ポテンシャルの方法を用いた。最適化有効ポテンシャルの方法においては相関・交換エネルギーをコーンシャム軌道によって書き下しておいて、その表式を用いて最適化有効ポテンシャルを構成する。コーン・シャム軌道は得られるべき局所有効ポテンシャルによってセルフコンシステントに定義される。本研究ではRPAレベルにおける正しい、交換・相関エネルギーを用いるが、本年度は原子内交換・相関エネルギーのみを正しく計算し、原子間交換・相関エネルギーは一様電子ガス中の原子に対する表式を角いて評価した。この結果、(1)原子間交換・相関エネルギーは大きくなく、原子内交換・相関エネルギーで一応評価できること、(2)有効ポテンシャルを求めるために必要な積分方程式の解をKLI近似と呼ばれる方法を用いて解いているいるために、相関エネルギーによる寄与が小さく見積もられすぎていること、(3)しかし、交換ポテンシヤルの影響でd状態が局在化し磁性半導体のdレベルが6〜8eV程度下がること、(4)RPA計算の変わりに遮蔽交換ポテンシャルを用いて、有効ポテンシャルを構成すると、LDAに近い結果が得られることなどが明らかになった。
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