1.高強度のチタンサファイアレーザーの基本波と27次高調波をヘリウムイオンに同時照射した場合の高調波発生について、時間依存シュレーディンガー方程式をPeaceman-Rachford法を用いて数値的に解くことによって検討した。 ヘリウムイオン(He^+)はイオン化ポテンシャルが大きい(54.4eV)ため、水素原子を用いた場合に比べカットオフ次数は高くなるものの、基本波のみを用いた場合の発生効率は極端に低くなる。これに対し27次高調波を同時照射すると、カットオフ次数は高いまま、発生効率が17桁も増大することが分かった。そのメカニズムについて詳細な解析を行い、コヒーレント重ね合わせ状態からの高調波発生と、仮想準位からの光電場電離の二つの寄与があることを明らかにした。どちらの寄与が大きいかは基本波波長に依存し、例えば800nmでは前者が、785nmでは後者が支配的である。 この劇的な効果は、より短波長の高強度パルス光源の開発への道を拓くものと期待されると同時に、単純な水素様の系であっても巧妙に準備された状況下では予期できない挙動を示すことを表している。 2.ヘリウム原子(2電子系)に対する時間依存シュレーディンガー方程式を数値的に解く高度なシミュレーションコードの開発を、2電子波動関数の角度方向の成分をcoupled spherical harmonicsによって展開し、finite difference (FD)グリッドでの値で表した動径波動関数の時間発展を差分陽解法で計算することによって行った。
|