我々は粗視化したスケールの揺らぎに比べて充分小さいが、微視的スケールの揺らぎに比べて大きい変位に対する「粗視化されたレベル」における協同運動を図る指標としてカオス力学系の有限サイズリヤプノブ指数を用いて「進化の所産として獲得された(とされる)」ファネル型と非ファネル型エネルギー地形をもつたんぱく質における遅い大振幅ダイナミックスにおける協同運動を解析した。有限サイズリヤプノフ指数とは、端的にいえば、可変な有限解像度のもとでの軌道不安定性の強さに対応する。解析の結果、微視的には強いカオスであるが、大振幅運動を伴う主成分座標に投影した運動は「(微視的な)強力オス→(粗視化されたスケールの)弱カオス」への転移が観測され、フラストレーションがより小さいファネル型エネルギー地形ほど顕著にその傾向があることが分かった。凸凹なポテンシャルエネルギー面上で生起する化学反応動力学を記述する基礎理論を構築することを目的とし、「どのような条件下で異なるサドルを通過する反応軌道のあいだにダイナミカルな相関が持続しえるか」などの多遷移ダイナミックスに関する一般的性質を抽出するための少数自由度メタファーモデルを作成した。 研究成果に関しては、国際会議4件(うち、2件は招待講演)および日本蛋白質科学会、日本物理学会、分子構造総合討論会などで発表し、学術雑誌Adv.Chem.Phys.の編集と総説執筆を行った(2004年度以内に出版される予定)。
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