段階的放射状錯形成を確定するため、DPA内の金属集積状態を透過型電子顕微鏡(TEM)により調べた。DPA1個に対し14個、30個の塩化スズをそれぞれ錯形成させ、金属部分を観察した。双方ともサイズのそろった金属部分が観察されたが、14個のものは30個の場合よりサイズが小さい。錯形成がランダムに行われると、金属が飽和しない状態でも最外層に配位するのでTEMで観測される大きさとしては同等となるはずである。すなわち、この結果は塩化スズがDPAの中心から集積されている直接的な証拠である。 次に、化学的還元により金属集積状態を検討した。イミンは、一般的に還元剤により2級アミンに還元されるが、プロトン、金属イオンなどのルイス酸により大きく加速される。 DPAにおいて、塩化スズを配位させたイミン部位のみを選択的に還元することができれば、段階的錯形成の証拠となるとともに、選択的合成としても興味深い。SnCl_2を内包した、各世代のDPAについて、還元剤(NaBH_4)によるコア部イミンのみの選択的還元を試みた。DPAに塩化スズを2当量のみを内包させ、還元すると、最中心の2つのイミンが選択的に還元される事実が明らかとなった。また、コアのベンゼン環に電子吸引基(F)を導入し、塩化スズの配位順を変化させた場合、分光法により決定されている配位順と一致する、第2層が選択的に還元された。以上の結果から、DPAにおける、中心からの段階的錯形成という特異な現象を確定できた
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