ぎんが衛星を用いた銀河面サーベイ観測のデータを解析し、ブラックホール候補天体の探査を行った。その結果、じょうぎ座の方向に柔らかいX線スペクトルをもつ天体を発見した。X線カタログと照合したが、本研究で求めた誤差領域は大きいため、明確な対応天体は特定できなかった。新天体である可能性が高い。同じ領域はぎんが衛星で複数回観測を行っているが、この天体が検出できたのは1988年4月のみである。またアメリカのRXTE衛星の銀河面サーベイ観測でも対応する天体はみられない。これらのことから、トランジェント天体であると結論した。X線スペクトルは、ブラックホール天体がハイステートの時期に見せるX線スペクトルと同様の温度が600万度の降着円盤からの放射モデルでよく説明できる。X線スペクトルの特徴、トランジェント天体であることはブラックホール候補天体のもつ性質と矛盾しないことがわかった。この結果については論文にまとめ、投稿した。 銀河円盤領域にはたくさんのX線天体が存在する。銀河中心方向に見つかったトランジェント天体は、存在する位置とX線スペクトルのおおよその形から考えて、小質量星と中性子星との連星系である可能性が高い。そのX線スペクトルをこの種類の天体で適用される降着円盤からと中性子星表面からの放射のモデルで合わせてみると、降着円盤からの放射の温度は典型的な値に比べ高くなることがわかった。これはブラックホール候補天体のvery high stateにおける傾向とよく似ている。ブラックホール候補天体の場合と同じような高温のプラズマによるコンプトン散乱の効果も考慮し、スペクトル解析を行った。
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