本研究の目標は、N体計算により、ブラックホールを持つ恒星系の力学進化を調べ、恒星系の中にあるブラックホールの成長を明らかにすることである。この数値計算が難しいのは、ブラックホールとそのまわりの恒星の質量比が大きいことと、多くの場合にブラックホールを含む恒星系は衝突系であることによる。 このようなシミュレイションを現実的な時間で行なうためには、衝突系向き重力多体問題専用機GRAPE6を並列化して用いる必要がある。またアルゴリズムも工夫しないといけない。今年度は、衝突系の並列計算をより高速に行なうための、ホスト計算機用のマザーボードを大量に購入した。購入したのは、向こう1年は最速のCPUであろうAMD Athlonの64bitCPUをのせることができ、またGiga bit ethernet connectionをもつマザーボードである。その64bit CPU用のGRAPE6のライブラリを作成した。これによって、ホスト計算機自体の計算速度、および、並列計算におけるネットワークの速度の両方を速くできるようになった。 また、ブラックホールの成長において、恒星系の中にブラックホールが3体以上ある場合の進化を調べるため、個々の質点が半径を持ち、ある程度近付いたら合体するような3個の質点系の時間積分のためのプログラムを作成した。そのプログラムを応用して太陽系内の小天体の力学進化を調べ、太陽系内にある小天体ペアの起源について新しい知見を与えることに成功した。
|