本研究では、前年度に開発したVLSIチップを塔載するための専用のフロントエンド回路(FEC)基板を製作し、そのテストを行った。このFEC基板は、64チャンネルのマルチアノード光電子増倍管(MAPMT)1本に対して、4枚の基板が1組となって、VLSIを2チップと16ビットのADCを塔載している。このFEC8組分を1枚のバス基板に取り付けた読出しユニットを製作し、それをVME計算機上のインターフェイスに接続して、512チャンネル分のデータを1kHzの速度で取り込むことができるシステムを完成した。 総合的な読出しノイズは、VLSIチップのノイズ0.8fC(カタログ値)に近い1.3fCという値が得られ、初年度の既存のFEC基板を流用した場合の12fCよりも格段に改善された。その結果、目標のダイナミックレンジ3000に到達していることを確認した。 このFEC読出しユニットを使用したシンチファイバー検出器に、電子、陽子、μ粒子のビームを照射するテストを7〜8月にCERNで行った。その結果、200GeVの電子シャワーに対して、6radiation lengthにおけるシンチファイバーの最大輝度が、ダイナミックレンジの5〜7分の1に収まっていることを確認した。 ビームテストまでは汎用のVMEインターフェイスを利用し、FEC読出しユニットとの通信は、外付けの回路を製作した。本研究の最後に、読出しユニットの複数化にも対応できるように、通信ユニット4台分までを収容するVME規格のインターフェイスボードの開発、製作を行った。
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