ブレーザーは電波からTeVガンマ線までの広い領域にわたって放射を出していることが知られている活動銀河中心核の一種である。特にガンマ線領域での放射がIuminosityの大部分を占めていることから、その放射機構が注目されている。ブレーザーは他の活動銀河中心核と同じく、放射のエネルギー源が大質量ブラックホールと関連していると考えられている。またX線からガンマ線にわたる高エネルギーの放射は相対論的速度で運動するジェットからの放射と考えられている。本研究のテーマであるGeVブレーザーとは、ガンマ線放射のピークがGeV領域にある天体である。この天体はガンマ線をジェットの外部からくる低エネルギー光子の逆コンプトン散乱で放射していると考えられている。この研究では多波長にわたる観測データが豊富な天体3C 279についてモデルをつくり、ジェットの放射領域にあるプラズマの物理状態を調べた。その結果、3C 279では、ジェットのバルクなローレンツ因子が25、磁場の強さが0.3G程度であることがわかった。また、逆コンプトン散乱ではクライン-仁科領域での散乱が重要な役割を果たし、電子のスペクトルに大きな影響を与えていることがわかった。すなわち、電子のスペクトルは従来のモデル計算でよく仮定されるようなもbroken power law(トムソン領域で散乱がおこった場合に高エネルギー側の電子スペクトルが冷却のため折れ曲がる)ではなく、高エネルギー側のスペクトルがhardになることがわかった。また、ジェットの構成要素が電子・陽電子対プラズマなのか、あるいは電子・陽子プラズマなのかということについても考察を行った。その結果、冷たい電子の密度がある程度(非熱的電子の100倍程度)までなら、ジェットが電子・陽電子対で構成されているとしても観測と矛盾しないことがわかった。
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