本研究の目的は、気球に搭載された天体観測装置を半自動的に目標天体を追尾させる姿勢制御が可能なシステムを構築することにある。我々、ISAS/JAXA大気球観測センターでは天体観測に対応する姿勢制御システムの開発に取り組んできた。この結果、500kg程度の大重量の気球搭載用天体観測装置を0.1度の精度で安定させることは可能な状況にある。しかし、天体は日周運動をするため、それを追尾するよう指向方向を変更するコマンドを頻繁に打つ必要があった。特に今後登場すると思われる高精度の観測装置は視野が狭く、自動的に追尾するシステムが不可欠である。 本年はCPUとしてSH3を搭載したオンボードコンピューターでlinuxを動かし、PC104バス規格で自作したデジタルIOボードと購入したADCボードによる制御システムを制作した。この試験を行うため、重量500kg、慣性モーメント100kgm^2の搭載機器の制御を念頭におき、慣性モーメント4kgm^2のリアクションホイールとより戻しモーターを製作し、仰角制御機構を製作した。本年度は制御ループは従来どおりアナログ系で制作し、天体の追尾動作のみをCPUで軌道計算を行うソフトウエアを組み込むことで実現した。この方式により実際に地上試験を行い、制御が可能であることを実証した。 本システムの特徴は簡便なPC104バスで規格化したモジュールの組合せとして実現したため、機能の拡張が容易に可能である点にある。来年度は当初の予定どおりフルデジタルでの制御を実現するとともに、コマンドデコーダー、テレメーター部の製作を行い、屋外にて実際の星のトラッキングを行い、機能を実証する予定である。
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